リンパ腫グループ Lymphoma Study Group:LSG

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リンパ腫グループ Lymphoma Study Group:LSG

  • グループ代表者:永井宏和(国立病院機構名古屋医療センター)

  • グループ事務局:棟方理(国立がん研究センター中央病院)

  • 主任研究者:永井宏和(国立病院機構名古屋医療センター)
    丸山大(がん研究会有明病院)
    福原規子(東北大学病院)
    片岡圭亮(国立がん研究センター研究所)

  • グループ代表委員:楠本茂(愛知県がんセンター)
    古林勉(京都第一赤十字病院)
    島田和之(名古屋大学医学部附属病院)
    鈴木智貴(名古屋市立大学病院)
    中村信彦(岐阜大学医学部)
    福原規子(東北大学病院)
    蒔田真一(国立がん研究センター中央病院)
    牧山純也(佐世保市総合医療センター)
    宮崎香奈(三重大学医学部)

  • 設立:1978年

          

※グループ代表委員とは、グループで行われる臨床試験の計画、実施の際に中心的な役割を担うメンバーです。
※主任研究者に関する詳しい情報は、共同研究班一覧をご覧ください。

          

沿革と概要

JCOGリンパ腫グループ(LSG)は、1978年度に始まった厚生省がん研究助成金指定研究「がんの集学的治療の研究」班の開始時より活動を始めた研究グループで、40年以上の歴史があります。
悪性リンパ腫をはじめとするリンパ系腫瘍は、化学療法に高い効果を示します。リンパ系腫瘍に対する標準的化学療法の確立のため、リンパ腫グループはこれまで37の臨床試験を実施し、リンパ系腫瘍の標準治療確立に貢献してきました。対象としている疾患は、B細胞リンパ腫・T細胞リンパ腫(成人T細胞白血病/リンパ腫:ATLを含む)などの非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫です。

 

研究のあゆみと主な成果

リンパ腫グループ最初の多施設共同研究は、非ホジキンリンパ腫を対象としたVEPA療法に関する第II相試験(JCOG7801)です。続いて、VEPA療法とVEPAM療法を比較する第III相試験(JCOG8101)を行いました。当時開始した病理中央診断のシステムは、病理診断の質向上に寄与すると共に、現在、各臓器がんで行われている病理中央診断へと発展しました。治療開発研究と共に、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)の研究を積極的に推進し、数々の疫学研究の成果や、病因ウイルスの発見(HTLV-1)、病型分類の提唱など、多くの世界的な研究成果をあげてきました。以下に各疾患で行った試験について説明します。

  • 非ホジキンリンパ腫(NHL:Non-Hodgkin lymphoma)

進行期中高悪性度非ホジキンリンパ腫に対する3週1コースのCHOP-21療法と、2週1コースのCHOP-14療法の比較試験(JCOG9809)では、CHOP-14群の無増悪生存期間(PFS)がCHOP-21群を上回らず、中高悪性度非ホジキンリンパ腫における治療間隔を短縮するdose-dense化学療法に有用性がないことを示しました。
その後、分子標的薬であるリツキシマブ(R:抗CD20モノクローナル抗体)とCHOP-21療法の併用が、中高悪性度非ホジキンリンパ腫の代表的病型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する標準治療となりました。リンパ腫グループで行ったリツキシマブ(R)とCHOP-21療法併用におけるリツキシマブ至適投与法を確立するためのランダム化第II/III相試験(JCOG0601)により、リツキシマブの投与法による効果の違いは認められないことが明らかになりました。高リスクDLBCLに対する自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法のランダム化第II相試験(JCOG0908)により、大量化学療法前の導入療法としてR-CHOP-14療法が推奨される治療法であることが示されました。
進行期の低悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫に対し、リツキシマブとCHOP-21の併用化学療法(R-CHOP-21)と、G-CSFを併用することによるdose-dense化学療法であるR-CHOP-14療法を比較した試験(JCOG0203)では、dose-dense化学療法の有用性は認められず、R-CHOP-21療法が標準治療であることを報告しました。長期フォローにより本疾患の長期予後と二次がんなどの晩期毒性を明らかにするべく登録後15年におよぶ長期追跡を行いました。現在、低悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫の主な病型である濾胞性リンパ腫の低腫瘍量の患者さんに対して、リツキシマブの導入時期の最適化を検討する試験(JCOG1411)、高腫瘍量の患者さんに対してオビヌツズマブ+ベンダムスチン療法後のオビヌツズマブ維持療法の意義を検討する試験(JCOG2008)を行っています。
非ホジキンリンパ腫の一病型であるマントル細胞リンパ腫に対する第II相試験(JCOG0406)では、若年者に対する自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法の有効性と安全性を示しました。
また、限局期NK/T細胞リンパ腫に対する放射線治療と化学療法の同時併用療法の第I/II相試験(JCOG0211DI)では、同療法が安全に実施可能で、従来の放射線治療単独に比べて、生存期間延長に寄与することを明らかにしました。この治療法は、国際的な標準治療のひとつとなっています。

  • 成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL:adult T-cell leukemia-lymphoma)

アグレッシブ(侵攻的)ATLに対する、LSG15多剤併用療法(JCOG9303)とCHOP-14療法とのATLに対する世界初の比較試験(JCOG9801)の結果から、LSG15はCHOP-14療法より優れており、生存期間中央値が世界で初めて1年を超え、アグレッシブATLに対する国際的な標準治療となりました。現在、アグレッシブATLに対する同種造血幹細胞移植療法の非ランダム化検証的試験(JCOG0907)、インドレント(緩徐進行)ATLに対するインターフェロンαとジドブジンの併用療法と、標準治療であるWatchful waiting療法のランダム化第III相試験(JCOG1111)の登録が終了し追跡期間に入っています。極めて難治性であるATLの予後の改善や新たな治療開発に取り組んでいます。

  • ホジキンリンパ腫(HL:Hodgkin lymphoma)

ホジキンリンパ腫に対して行ったC-MOPP/ABVd療法(JCOG8905)と、ABVd療法(JCOG9305)の治療成績は、欧米のMOPP/ABVD療法やABVD療法に比べても遜色なく、わが国の標準治療となり、ダカルバジンのHLの公知申請・薬事承認に貢献しました。現在、進行期の患者さんに対して治療中間PET検査により層別化治療をおこなう試験(JCOG1305)を行っています。本試験により本邦における進行期ホジキンリンパ腫の標準療法の確立を目指します。

  • 多発性骨髄腫(MM:Multiple Myeloma)

再発多発性骨髄腫に対するボルテゾミブとサリドマイドを比較するランダム化第II相試験(JCOG0904)により1年PFSの比較で、ボルテゾミブがサリドマイドに比較して有効であることを明らかにしました。また、自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法の適応とならない未治療多発性骨髄腫患者に対する標準治療として確立しているMPB療法の最適化を検討するランダム化第II相試験(JCOG1105)では、治療初期のボルテゾミブの投与スケジュールと、累積投与量が治療成績に影響することを、世界で初めて前向きの臨床試験のデータとして示しました。現在、JCOG1105で最適化されたMPB療法とダラツムマブ(抗CD38モノクローナル抗体)併用療法後の維持療法を強化することによる予後改善を目指した第III相試験(JCOG1911)を実施しており、標準治療の確立を目指します。


        

今後の展望

リンパ系腫瘍は、進行期でも治癒が期待できる病気ですが、希少疾患であるため、十分なエビデンスが少ない病型もあります。新規薬剤も積極的に取り入れ、今後も高水準の臨床研究に基づいた標準治療確立を推進していきます。また、患者会と研究グループ間で十分に情報を共有し、臨床研究の開発段階から患者さんとの意見交換を行っています。そして、リンパ系腫瘍の発症原因や悪性度に関わる遺伝子、副作用の出現に関わる遺伝子の解析を行う附随研究を積極的に行っています。JCOGバイオバンクを利用した研究も併行させており、臨床に還元できる基礎研究を展開しています。

          

※グループ活動の紹介文は、2022年8月に更新したものです。

       
 

実績

        

その他の研究グループ