脳腫瘍グループ Brain Tumor Study Group:BTSG

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脳腫瘍グループ Brain Tumor Study Group:BTSG

  • グループ代表者:成田善孝(国立がん研究センター中央病院)

  • グループ事務局:荒川芳輝(京都大学医学研究科)

  • 主任研究者:隈部俊宏(北里大学医学部)
    荒川芳輝(京都大学医学研究科)
    園田順彦(山形大学医学部)

  • グループ代表委員:大野誠(国立がん研究センター中央病院)
    金森政之(東北大学病院)
    木下学(旭川医科大学)
    小林啓一(杏林大学医学部)
    柴原一陽(北里大学医学部)
    田中將太(岡山大学病院)
    新田雅之(東京女子医科大学)
    峰晴陽平(京都大学医学研究科)
    本村和也(静岡県立静岡がんセンター)
    山口秀(北海道大学病院)

  • 設立:2003年

       

※グループ代表委員とは、グループで行われる臨床試験の計画、実施の際に中心的な役割を担うメンバーです。
※主任研究者に関する詳しい情報は、共同研究班一覧をご覧ください。

         

概要

脳腫瘍とは頭蓋内にできる新生物(腫瘍)の総称です。脳を構成する組織自体から発生する原発性脳腫瘍と、他臓器の悪性腫瘍が脳に転移してきた転移性脳腫瘍とに分けられます。脳腫瘍はその悪性度をグレード1(悪性度がもっとも低い)から4(悪性度がもっとも高い)に分類します。原発性脳腫瘍は2016年の全国がん登録データによると、人口10万人に対し、1年間に22.2人程度発生したと報告されていますが、その約25%が神経膠腫(グリオーマ)と呼ばれる腫瘍です。神経膠腫の代表は星細胞腫であり、そのグレード3、4の5年生存率がそれぞれ43%、16%と予後不良の疾患です。
一方で、年間100万人発生すると言われるがんの10%が転移性脳腫瘍を発症すると言われています。転移性脳腫瘍の約半数は肺がんからの転移であり、乳がん、大腸がんがそれに続きます。
JCOG脳腫瘍グループは2003年に結成され、全国の大学病院や基幹施設の脳神経外科を中心に構成されています。2021年1月の時点で41施設が参加し、脳腫瘍に対する標準治療や新規治療を開発するための臨床試験を行っています。

       

研究のあゆみ

2004年4月から2008年9月まで、星細胞腫グレード3または4の患者さんを対象とした「星細胞腫Grade 3・4に対する化学放射線療法としてのACNU単独療法とProcarbazine+ACNU併用療法とのランダム化第II/III相試験(JCOG0305)(研究代表 国立がんセンター 渋井壮一郎)」を実施しました。この試験は、第II相段階で登録を終了して解析を行った結果、プロカルバジン併用の生存期間延長効果は否定されました。
2010年4月から2014年1月まで、テモゾロミド併用放射線治療にインターフェロン-βを加えた際の上乗せ効果をみる「初発膠芽腫に対するインターフェロン-β+テモゾロミド併用化学放射線療法のランダム化第II相試験(JCOG0911)(研究代表 名古屋大学 若林俊彦)」を実施しました。2014年6月の最終解析結果で、インターフェロン-β併用の生存期間延長効果は否定されました。2014年5月から神経膠腫グレード3に対する試験「初発退形成性神経膠腫に対する術後塩酸ニムスチン(ACNU)化学放射線療法先行再発時テモゾロミド化学療法をテモゾロミド化学放射線療法と比較するランダム化第III相試験(JCOG1016)(研究代表 東京女子医科大学 村垣善浩)」、2014年7月から星細胞腫グレード2に対する試験「手術後残存腫瘍のあるWHO Grade II星細胞腫に対する放射線単独治療とテモゾロミド併用放射線療法を比較するランダム化第III相試験(JCOG1303)(研究代表 国立がん研究センター 成田善孝)」、2016年7月から再発の神経膠腫グレード4に対する試験「再発膠芽腫に対する用量強化テモゾロミド+ベバシズマブ逐次併用療法をベバシズマブ療法と比較する多施設共同ランダム化第III相試験(JCOG1308C)(研究代表 杏林大学 永根基雄)」、2019年6月から神経膠腫グレード4に対する試験「初発膠芽腫に対する可及的摘出術+カルムスチン脳内留置用剤留置+テモゾロミド併用化学放射線療法と可及的摘出術+テモゾロミド併用化学放射線療法のランダム化第III相試験(JCOG1703)(研究代表 北里大学 隈部俊宏)」、2020年8月から高齢者の神経膠腫グレード4に対する試験「高齢者初発膠芽腫に対するテモゾロミド併用寡分割放射線治療に関するランダム化比較第III相試験(JCOG1910)(研究代表 京都大学 荒川芳輝)」を実施しています。
転移性脳腫瘍については、2006年1月から2015年6月まで「転移性脳腫瘍に対する、腫瘍摘出術+全脳照射と腫瘍摘出術+Salvage Radiation Therapyとのランダム化比較試験(JCOG0504)(研究代表 山形大学 嘉山孝正)」という試験を実施しました。これは、1つが3 cm以上の直径を持つ4個までの転移性脳腫瘍の最大径のものを摘出後、すぐに放射線全脳照射を行う群と、術後全脳照射は行わずに残存あるいは再発腫瘍に対しガンマナイフなどの定位放射線治療を行う群との比較試験です。2015年12月の最終解析結果、非劣性が証明されました。つまり、転移性脳腫瘍では、手術直後に全脳照射を行う必要はなく、全脳照射後に問題となる高次脳機能障害の発生を防げる可能性があることが明らかとなりました。
近年増加傾向にある悪性脳腫瘍の1つである中枢神経系原発悪性リンパ腫に対しても、新しい治療開発に挑戦しています。2014年9月より、「初発中枢神経系原発悪性リンパ腫に対する照射前大量メトトレキサート療法+放射線治療と照射前大量メトトレキサート療法+テモゾロミド併用放射線治療+テモゾロミド維持療法とのランダム化比較試験(JCOG1114)(研究代表 埼玉医科大学 西川亮)」を実施しました。2020年6月にASCO Annual Meetingで中間解析結果として、テモゾロミド併用の生存期間延長効果が否定されたことを発表しました。

      

今後の展望

近年、神経膠腫では、遺伝子変異に基づく分子分類が予後を反映することが明らかとなりました。つまり、病理組織学的診断で同じ腫瘍と考えていた群に、遺伝子変異が異なる予後の異なる群が混在していたのです。今後は、分子分類に基づいた治療開発が必要となります。そこで、JCOG脳腫瘍グループでは、分子分類に基づいた神経膠腫に対する新しい臨床試験を計画しています。また、初発中枢神経系原発悪性リンパ腫、再発中枢神経系原発悪性リンパ腫に対する新たな臨床試験も計画しています。
JCOG脳腫瘍グループでは、希少疾患であり難治がんである脳腫瘍に対して、国際的に評価される標準治療の確立とより効果的な新規治療法の開発を目指して臨床試験を行っていきます。今後もグループ一丸となって研究を推進する所存ですので、ご支援の程よろしくお願い申し上げます。

      

※グループ活動の紹介文は、2021年1月に更新したものです。

    
       

実績

        

その他の研究グループ