JCOGの基本情報あいさつ

JCOG代表者 田村 友秀

平成21年4月より、JCOG代表者に就任しました、田村友秀です。私は、国立がんセンター中央病院で、20数年間、肺がん治療の臨床研究と新抗がん剤の臨床開発に取り組んできました。JCOGでは、前代表者である西條長宏先生のもとで、肺がん内科グループの事務局あるいはグループ代表者として、世界から注目される多施設臨床試験を実施してきました。日本中の肺がん内科グループ参加施設が一丸となって取り組んだ成果といえます。最近では、JCOGの他の研究グループからも研究成果が次々と国際学会で発表され、海外一流雑誌に掲載されるようになりました。この20年間で、日本のがん臨床研究は世界のトップレベルに仲間入りしたといえます。今後も、がん治療成績の飛躍的発展を目指して、意欲的に研究活動に取り組んでゆく所存です。ご協力のほど、よろしくお願いします。

がんは遺伝子の異常が積み重なって起きる病気であり、我々の食事などの生活習慣や生活環境の中には数多くのがんを引き起こす要因が存在します。がんは誰にでも起きる病気です。人口の高齢化に伴い、2人に1人はがんになり、3人に1人はがんが原因で死亡する時代となりました。がんの予防・早期発見、有効な治療法の開発など、がんに対する対策は急務です。

JCOGは、厚生労働省がん研究助成金や厚生労働科学研究費補助金を主体とする公的研究費によって運営される、多施設共同研究グループです。JCOGの役割は、多施設共同臨床試験を実施することによって、より効果の優れた新しい標準的治療法を確立することです。開発を目指す新しい治療法には、新たな抗がん剤の組み合わせによる化学療法のみならず、手術や放射線治療と併用した「集学的治療」も含まれます。
臨床試験は、患者さんを対象として、新しい治療法の効果と安全性を確認する目的で実施されます。新しい治療法が従来の治療法より本当に優れるのか、安全に実施できるのかが、臨床試験の中で実証されて、初めて全国の病院に標準的治療(最も効果的な治療)として広めることができます。がん治療の発展に臨床試験は不可欠です。臨床試験はヒトを対象とする試験ですので、自ら参加に同意された患者さんの人権や安全確保を最大限に配慮し、社会に対して透明性を保って実施されます。

JCOGの設立は、1990年に遡ります。JCOGの前身は、1978年にスタートした厚生省がん研究助成金指定研究「がんの集学的治療の研究」班(主任研究者 末舛恵一先生)であり、これが日本の本格的ながん治療臨床研究の始まりでした。1987年に研究班を引き継いだ下山正徳先生は、米国のがん臨床研究グループSWOG(SouthWestern Oncology Group)を手本に、研究のための組織構築を手がけ、Japan Clinical Oncology Group(JCOG)と命名しました。当時はまだ、臨床試験の知識も情報源も限られ、生物統計家もほとんど存在しない状況であり、1986年に国立がんセンターに赴任した私も全くの手探り状態の中で、意気込みだけは「半歩でも前進」「きっといつかは」であったことを記憶しています。その後、統計センター(現JCOGデータセンター)が設置され、臨床試験への理解と推進の機運の高まりとともに、1990年代後半からは、運営委員会、各種委員会、データセンターなどJCOGの中枢機構の整備や研究グループの新設が急速に進められました。

現在のJCOGは、運営委員会、中央支援機構(データセンター・運営事務局)、監視・管理機構(各種委員会)、研究実施主体(研究グループ)で構成されます。運営委員会は、JCOGの最高決定機関で年4回開催されます。データセンターと運営事務局は2006年に設立された特定非営利活動法人がん臨床研究機構(NPO CORE)との共同体制となりました。監視・管理機構としては、プロトコール審査委員会、効果・安全性評価委員会、監査委員会などの常設委員会、放射線治療・病理・試料解析などの専門委員会、各種小委員会が設置されています。研究グループには14の専門分野別のグループがあり、約170の医療機関(約470診療科)が研究に参加しています。JCOGポリシーや各種手順書(SOP)の整備も着実に進められており、国際的に十分通用する臨床試験の実施とデータ保証ができる体制がほぼ整ったといえます。しかしながら、米国の研究グループに比べると、運営資金、中枢機構の人員配置や待遇にはまだまだ大きな開きがあり、さらに研究組織の充実を図ってゆく必要があります。

JCOGの目的を達成するためには、臨床試験の支援機構・監視機構の充実と同時に、研究グループの研究者のレベルアップが極めて重要です。今明らかにすべき臨床課題は何か、その中で我々が独自性をもって実現可能なものはどれか、十分な検討が必要です。やってみれば何か結果がでるだろう、ではありません。国際社会に対してJCOG研究がいかに貢献できるか、世界の中でのJCOGの役割を考えてゆかねばなりません。JCOGの研究者には、その認識と前向きの姿勢を強く望みます。JCOGはこれからも発展を続けます。

2009年4月
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