- グループ代表者:坪井正博(神奈川県立がんセンター)
- グループ事務局:佐治久(東京医科大学)
概要
肺がん(呼吸器の悪性腫瘍)は1950年以降、男女とも一貫して増加し、1998年以降は日本人全体のがん死因の第1位となり、2009年には年間死亡者数が67,000人を超えています。高齢者に多いがんのひとつで、5年相対生存率(肺がんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標)は20%前後で、難治がんのひとつとされています。特徴的な症状が出にくいために発見時にすでに進行した状態で見つかることが多く、手術で完全に取りきることが期待できる方は肺がんを患っている方の約35%と言われています。しかし、近年コンピューター断層撮影(CT)をはじめとした画像診断の進歩やCT検診の導入により、比較的早期に発見されるようになってきています。特に手術だけで治る肺がんが明らかになり、その数も増えてきています。2009年の日本胸部外科学会学術調査で、年間約31,500人の肺がん患者さんが手術を受けていることが分かっています。手術を受けた方すべての5年生存割合は69.6%(2004年に手術を受けた患者さんのデータから)で、年々上がってきていますが、まだまだ治療成績を良くするための方策が必要な状況です。肺がん外科グループは全国の肺がん治療に力を入れている主要38施設で構成され、以下の4つのヴィジョンのもと多施設共同臨床試験を意欲的に取り組んでいます。
肺がん外科グループのヴィジョン
1)誰でも同じように高い技術の手術が受けられる手技の標準化
2)身体の負担をかけずに同じ効果が得られる低侵襲手術の確立、標準化
3)手術単独では治せない肺がんを化学療法や放射線治療などと組み合わせて治るようにもっていく集学的治療の開発と確立
4)個々の患者さんの体質や病態に合わせて最適な治療を行う個別化治療の確立
研究の歩み
肺がん外科グループは1986年に設立されたJCOGの中では6番目に古いグループで、現在までに15の臨床試験を計画、実行してきています。中でも、肺のてっぺんあたり(肺尖部と言います)にできた肺がんに対して、抗がん剤と放射線の治療を行った後に手術を行うことの有効性を評価したJCOG9806の結果は、米国で行われた同様の試験と合わせてこの病状の患者さんに対する標準治療の確立に貢献しました。近年、薄切CTをはじめとした画像診断の進歩により、これまでは見つからなかった小さながんが見つかるようになったため、早期肺がんの割合が増えています。2007年の胸部外科学会学術調査では、肺がんの手術を受けた患者さんのうち、病理病期I期(がんの大きさが3cm以下でリンパ節転移がない状況)は約70%を占め、1994年の50%、1999年の60%と比べ確実に増加しています。したがって、低侵襲で安全かつ確実な手術方法の標準化は急務です。そこで、我々は、まず手術前のCT画像からリンパ節転移がなく手術した後に再発・転移することがないであろう早期肺がん(非浸潤がんと言います。)を選び出す試験(JCOG0201)を行いました。その結果、2cm以下で芯(consolidationと言う濃い影の部分)が小さいすりガラス主体の腫瘤影を「非浸潤がん」と規定しました。現在、我々は2cm以下の小型肺がんを対象にして、この結果を確認すると同時に、縮小手術(区域切除、楔状切除)の確立を目指した2つの臨床試験JCOG0802/WJOG4607LとJCOG0804/WJOG4507Lを西日本がん研究機構(WJOG)と共同で行っています。肺葉切除と区域切除を比較する第Ⅲ相試験(JCOG0802/WJOG4607L)は、米国でも同じような試験(CALGB140503)が行われており、その進捗と結果を世界が注目しています。
一方、肺がんを手術で完全に取りきれたとしても、病期(がんの進み具合)に応じて、ある一定の割合で再発・転移を起こすリスクがあることが分かっています。そこで、手術の前後に抗がん剤や放射線と組み合わせる併用療法(集学的治療と言います)の臨床試験を進めています。JCOG0707は、がんの大きさが2cmを超える病理病期Ⅰ期の肺がんに対して、Ⅱ・Ⅲ期の胃がんの術後に有用性が示されたテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)が、現在標準的とされているテガフール・ウラシル配合剤(UFT)の効果を上回る有効性があるか否かを検証する比較試験です。
肺がん外科グループは大規模な比較第Ⅲ相試験の経験が乏しいので、現在行っているこれらの試験の患者登録を早い時期に終わらせることが最優先課題です。
今後の展望
今後も、肺がん治療、特に外科治療のさらなる成績向上を目指して、①手術手技、②集学的治療、③個別化治療の3つをキーワードに臨床試験を計画・実行し、科学的なエビデンス(EBM)の構築、新たな治療開発に向けて活動を続けていきます。また、がん医療に国境はありません。欧米人とアジア人の人種差から、国内の臨床試験グループとの共同試験のみならず、韓国などとの多国籍共同試験を行って東アジアでの肺がん治療の早期開発を行うことを検討していきたいと考えています。さらには、米国、欧州の共同試験グループと恒常的に情報を交換して国際的な視野に立った活動にも邁進したいと思っています。
※グループ活動の紹介文は、2011年10月に更新したものです。











